北の道3 デバ − マルキナ


5月16日(月)歩き出発から4日目

 早朝、まだ暗いうちにデバのアルベルゲを出発。写真で見るとおり、2階建のアルベルゲは駅の構内にあります。今朝は雨の降ってないスタートでラッキーだ。大きな川を渡るとすぐに山の中に入っていく。この日もしょっちゅうフランス親父達とつるんで歩く。それと元気なオランダ人も。このオランダ人はイルンで最初にあったので私と同じイルンがスタートかと思っていたが、フランスのル・ピュイからスタートしてスペイン国境の村サンジャンまで歩き、そこからイルンまでバスで来て北の道を歩き始めた人だった。もう1ヶ月以上歩いていると聞いたのでギョギョギョだ。映画「サンジャックへの道」のスタート地点だったル・ピュイの道には興味があって、でもそこは毎日次のジット(フランス版アルベルゲ)に予約を入れないとならないらしいのでフランス語は5つの単語しか知らない私にはハードルが高いなぁと思っていたので、あんたはフランス語が出来るのかと聞いてみた。出来ないって!?でも、問題ないそうだ。食べる・泊まるはみんな身振りで伝わるだろと、そのポーズをしてみせている。うーむ、そうは言ってもなぁ〜。このオランダ人は英語が喋れるから私とはやっぱり違うだろう。

北の道の魅力

 デバから次の宿泊地マルキナまで村も町も一切なく数時間ずっと山の中を歩く。本当に北の道は過酷だ。この道を歩くペリグリノは統計的にはフランス人の道の1割しかいないので、人が少ないイコールそれ目当ての宿もバルも店も少ないと言うことになる。結果としてこの道を歩くペリグリノは数少ない次のアルベルゲを目指して長い距離を歩かなくてはならないと言うことだ。でもそれは同じ顔ぶれがいつも同じアルベルゲに集合することになるので、ペリグリノ同士の連帯感はフランス人の道よりずっと強くなるというおまけが付く。歩く道がしんどけりゃしんどいほど仲間意識が強くなるのは容易に想像できる。

 人が少ないから一日歩いても誰とも会わない日が時々あるので、歩いている人を見つけるとなるべく離れないようにしている。お互いに道連れは心強い貴重な存在なのだ。今日は珍しく黒人青年のアメリカ人と会った。しばらく数人で歩いていたが、このアメリカ人は途中で青い髪をした女の子が休んでいたらそこに引っかかってそのままになった。若者はそうだよなー。

 マルキナの町に入ってきたら、ルゴン達フランスグループ3人は途中の張り紙にあった15ユーロの私営アルベルゲがgoodと言って、そっち方面に行ってしまった。残った私たちグループは(フランス人2、オーストラリア婦人、オランダ人と私)公営アルベルゲを目指す。途中にあった教会に入ったら、大きな岩が聖堂の中にあってビックリした。どんな言われがあるんだろう?

 アルベルゲのオープンまで1時間あるので、近くのバルのテラス席でビールを飲んで待つことにする。日本から持参の黒糖ピーナッツを提供したら好評だったので持ってきた甲斐があった(写真テーブル中央黄色い袋)。フランス人のルックが2杯目のビールをみんなに奢ってくれた。フランス人太っ腹〜。
 アルベルゲがオープンしたので全員でチェックイン。宿代はドナティーボだったので5ユーロを入れる。ベッドは今日も暮らし憎い上段だったが仕方なかろう。フランス人二人に和風マリアカードを上げたら裏に名前を書いてというので、こっちのノートにも名前を書いてもらう。ルックは英語を話すがモーリス(写真右から二人目)はフランス語のみ。最初のうちモーリスは皆が英語で話しているとずっと押し黙っていたが、この頃になるとフランス語で話すようになったので、打ち解けてきたのが分かる。二人とも昨年フランス人の道を9月に歩いたそうなので、私とは4ヶ月ずれていたようだ。北の道を歩いていると、時々「ユーはカミーノは何度目だ?」と聞かれることがある。やっぱり最初はフランス人の道を歩き、2度目3度目に北の道に来る人が多いようだ。私はまだ2度目だけど、2度目と言えるのがちょっと誇らしい気分になる。

 ここには手洗いで洗濯したあとに自動の絞り器があって非常に助かる。丸い筒に濡れたままの衣類を入れて蓋をするとブーンと音を立てて脱水してくれる。外側に置いた洗面器には絞られた水がじゃんじゃん出てきて気持ちがいい。手洗いの洗濯では最後のこの絞る作業がとても大変なのだ。血管がぶち切れそうな勢いで絞らないと早く乾かないから毎回絞る作業には苦労が付きまとう。どこのアルベルゲにもこんな絞り器が備わっていると助かるのだがなぁ。
 この絞り器の順番を待っていたら、前の夫婦が昨年フランス人の道で私を見たと言い出したのでビックリ!!確かに昨年の5月から6月に掛けてフランス人の道を歩いたと言ったら、「やっぱり」と言う様なことを言っていた。こちらは欧米人の顔を覚えきれないが、あちらは珍しい東洋人なので覚えていてくれたらしい。こんなこともあるんだなぁと、ちょっと嬉しくなる。

 夕方(と言っても日暮れが9時10時と遅いのでいつから夕方なのか不明)、オーストラリアのアンナ54歳が誘ってくれて夕飯を食べに行くことになった。他にブラジルのジルベルトとオランダのヘルツゥの4人で町のレストランへ。テーブルを囲んで大いに盛り上がるが英語が片言の私はどうしても置いていかれるが仕方ない。こちらに話を振ってくれると何とかかんとか片言で返すことが出来る程度。もっと英語が話せるようになりたいといつも思う。

 料理は最初に豆のスープが鍋で出てきて、次に豚肉ステーキ。デザートにはライスコンレチェ。これは米が入ったデザートで、スペインでは定番かと思われる。ちなみに、米はスペインでは野菜と同じ扱いになるらしく、1皿目の選択では野菜サラダと並んでパエリアなんかがチョイスできるレストランもある。ちなみにこちらではパスタも前菜の部類に入る。太る筈だよ。
 ビール2杯飲んで、みんなでワインを1本頼んで一人14ユーロ。他の席にもベリグリノが数人テーブルを囲んでいるので挨拶して店を後にする。
 食後にアンナとスーパーEROSUKI(スペイン定番のチェーン店)に行って次ぐ日の食料を仕入れる。バナナ×3、オレンジ、青りんご、高いヨーグルトのOIKOS×2で2.74ユーロ、日本円なら330円(1ユーロ120円)とても安い。

 明日は有名なゲルニカ迄の25kmを頑張ることにする。20km地点にアルベルゲがあるようだが、みんなゲルニカに行くと言っているので私もそうすることにする。もうここマルキナで予定より1日先行しているので、どこかで短い日を入れてもいいのだが、やっぱり仲間になった人たちと一緒の方が楽しい。

北の道4へ つづく